
BVISO100の概要
BVISO100は、電気生理学実験において必要とされる基本的な機能と、便利な自動キャリブレーション機能を備えた刺激アイソレーターです。

主な特長
- 電圧出力・電流出力を切り替え可能
- アナログ入力とパルス入力(2チャンネル)に対応
- 刺激アーティファクトを最小化する静電容量バランス調整機能
- 高度な自動キャリブレーション機能
- 出力電圧と出力電流をリアルタイムモニター
- ソフトウェア付属 モニター波形表示や計測値のCSV保存も可能
アプリケーション
- 電気生理学実験全般
- 脳スライス標本や心臓サンプルへの電気刺激
刺激アイソレーターが必要な理由
刺激アイソレーターは、電気生理学実験において電気的絶縁を実現する重要な装置です。
記録系への干渉防止
非絶縁型の刺激装置では、刺激電流が溶液全体や接地電極を介して流れてしまい、チャンバー溶液内の電圧が上昇します。この現象により、観察対象である細胞膜電位の正確な測定が困難になります。

A: 非絶縁型 B: 絶縁型
電流経路の制御
非絶縁型の刺激装置では、生体組織内の予期しない経路に電流が流れる可能性があり、意図しない部位への刺激が発生するリスクがあります。
BVISO100の特長
入力機能: アナログとパルスに対応
BVISO100は、電気生理学実験のニーズに応えるため、アナログ入力と2チャンネルのパルス入力の両方に対応しています。これらの入力は、光アイソレータを介して絶縁され、後続の信号処理部に伝達されます。
入力モードの切り替えは、前面パネルの「Input Mode」スイッチで簡単に行えます。
アナログ入力
低電圧信号(±1Vまたは±5V)を絶縁し、高電圧(±100V)まで線形増幅する機能を提供します。BVISO100をリニアアイソレーターとして活用できます。線形性向上のためのフィードバック回路を内蔵していますが、約±2%の誤差が存在します。
アナログ入力使用時は専用ソフトウェアなしでも動作可能で、スタンドアロン運用に対応しています。
パルス入力(2チャンネル)
TTLレベルのデジタル信号(0V/5V、閾値1.4V)を任意の高電圧パルス出力に変換します。Pulse1とPulse2の2つの独立したチャンネルを備えています。
パルス入力モード使用時は、PCとのUSB接続および専用ソフトウェアでの設定が必要です。各チャンネルのパルス高(電圧または電流)はソフトウェアで設定します。
出力機能: 電圧/電流を切り替え可能
実験条件に応じて電圧出力と電流出力を切り替えることができます。切り替えは前面パネルの「Mode」スイッチまたはソフトウェアの「Mode」ボタンで行います。
電圧出力(CVモード)
入力に応じた電圧を負荷抵抗に関係なく一定に出力する機能です。出力電圧範囲は±100V、電流は最大3mAに制限されます。
電流出力(CCモード)
電流を一定に出力し、負荷抵抗により電圧が変化する機能です。出力電流範囲は0~1mAで、1.0mA、0.3mA、0.1mAの3つのレンジが選択可能です。
高度な自動キャリブレーション機能
BVISO100は実験の精度と信頼性を向上させるため、高度な自動キャリブレーション機能を搭載しています。内部回路の変動や電極特性の変化による問題を自動的に補正し、安定した刺激出力と測定環境を提供します。
自動ゼロ校正
主に以下の目的で使用されます。
- オフセット補正:内部回路の温度変化等により発生するオフセットを自動調整し、出力をゼロに維持
- 電極分極電圧への対応:電圧出力モードで出力ON状態でのゼロ校正により、電極の固定電位差に合わせたオフセット調整を実行。異種金属電極使用時の固定電位差を相殺し、定常電流の流れを抑制
実行は本体前面パネルの「Calibration - Zero」ボタンまたは専用ソフトウェアの「AutoZero」ボタンで開始できます。
自動容量校正
電極抵抗による遅延を位相補償し、出力パルスの高速立ち上がりを維持することを目的としています。
本体前面パネルの「Calibration - Capacitance」ボタンまたは専用ソフトウェアの「Cap.Comp」ボタンで実行可能です。
静電容量バランス調整機能
絶縁部と接地間の静電容量による容量性電流を相殺する機能です。電気刺激によるアーティファクトを最小化し、高精度な電極記録を実現します。
この機能は自動調整ではなく、記録電極の波形に現れるアーティファクトを観察しながら手動で調整する方式です。
出力電圧と出力電流をリアルタイムモニター
電気生理実験中の出力電圧と出力電流をリアルタイムで監視する機能を搭載しています。本体LED表示と専用ソフトウェアを通じて、詳細な波形観察と数値データ確認が可能です。これにより、刺激状況を即座に把握でき、問題発生時の迅速な対応が可能となります。
また、監視した電圧値・電流値を記録しておくことで、次回実験からは感覚に頼らず、数値に基づいた再現性の高い刺激条件での実験が行えます。
モニター機能の概要
- 本体LED表示:BVISO100本体のLEDが出力電圧と出力電流の状態を表示
- PC波形観察・計測データ表示:USBインターフェースを介してPCに接続し、専用ソフトウェア上で出力波形を詳細に観察
専用ソフトウェア機能
刺激の詳細状況を視覚的に把握し、測定データを保存できる専用ソフトウェアが付属しています。

主な機能
- 電圧値・電流値の設定
- 出力電圧・電流のリアルタイムモニタリングと波形表示
- 計測数値のCSV形式での保存
- テスト機能
電圧値/電流値の設定
刺激パルスの高さ設定と、設定値の保存・読み出し機能があります。


リアルタイムモニター機能
本体LED表示では把握しきれない詳細な出力情報にアクセスできます。
DCレベル表示
出力電圧、出力電流、10倍分解能出力電流、入力電圧を一定間隔で表示します。

計測データ表示
刺激パルスによる出力電圧と出力電流の計測結果が表示されます。

表示項目
- 設定条件:測定シリアル番号、出力ON/OFF、CV/CCモード、アナログ/パルス入力ソース、極性(正極性/反転)、電流レンジなど
- 計測値:正方向最大値のTop電圧・電流、負方向最大値のBtm電圧・電流
- 算出値:電流と電圧から算出した抵抗値(R(KΩ))、測定パルス幅(Tw=)、正負両方向のパルス値に対する注入電荷量(Q=)(nC単位)
波形表示機能
ソフトウェアの波形表示エリアでは、出力電圧と出力電流の波形を視覚的に確認できます。

計測値のCSV保存機能
出力電圧と出力電流の波形データをCSV形式のファイルとして保存する機能です。
テスト機能
設定値に応じたパルスを出力する「Test pulse」や、電極抵抗確認用の連続矩形波を出力する「chk signal」といった、ソフトウェア専用のテスト機能も利用できます。
主な仕様
| 出力 | ||
|---|---|---|
| 出力チャンネル数 | 1 | BNCコネクタ |
| 出力端子 | SMAコネクタ | |
| 出力 | 電圧または電流 | ボタンまたはソフトウェアで変更 |
| 出力電圧範囲 | -100V~+100V | |
| 出力電流範囲 | 0~1mA | CV時は3mAまで |
| 設定可能な電流範囲 | 0.1mA / 0.3mA / 1.0mA | |
| 立ち上がり時間 | 2~10μsec | |
| 極性 | 反転可能 | 手動スイッチ |
| 出力遮断 | 手動ボタンまたは過負荷時には自動遮断 | |
| テスト出力 | パルス(設定の確認)/ 連続矩形波(極抵抗の確認) | |
| 入力 | ||
| 入力チャンネル数 | 3(アナログx1、パルスx2) | BNCコネクタ |
| 入力切り替え | 手動スイッチ | |
| 入力電圧範囲 | アナログ:±1Vまたは±5V (入力インピーダンス: 100KΩ/12KΩ、線形性エラー:±2%) パルス:TTLレベル (Vth:1.4V、入力インピーダンス: 10KΩ) | |
| 入力絶縁方式 | 光絶縁 | |
| 各種機能 | ||
| 自動ゼロ校正 | 内部回路の温度変化などによるオフセットと電極の分極電圧を自動校正 | 手動スイッチまたはソフトウェア |
| 自動容量校正 | 電線や電極による出力線間の容量を補償して高速な立ち上がりを保つ | 手動スイッチまたはソフトウェア |
| 静電容量相殺調整 | 絶縁部と接地間の静電容量による容量性電流を相殺 | 手動ダイヤル+手動スイッチ |
| 出力モニター | 本体LEDの点灯およびパソコンでの波形観察 | |
| PC・ソフトウェア | ||
| PCインタフェース | USB2.0 | パソコンでの設定および表示が可能 |
| ソフトウェア | 付属 | アナログ入力でトリガーする場合はソフトウェア不要 |
| 対応OS | Windows 10/11 | |
| 計測値の出力形式 | CSVファイル | |
| 構成品・寸法・重量 | ||
| 構成品 | BVISO100 刺激アイソレーター本体 / USB2.0ケーブル / ACアダプター 電極ケーブル/ ソフトウェアとUSBドライバー | |
| 電源 | ACアダプター 12V / 0.5A | |
| 寸法 / 重量 | W250mm x H90mm x D170mm / 1.5Kg | |
参考資料
アイソレーターBVISO100の機能と設計思想 (PDFファイル)
アイソレーター内蔵 多機能電気刺激装置 ESTM10A
電気生理実験やイメージング実験に必要な複数の機器を同期させるため装置 ESTM10の製品紹介です。

