低倍率なのに高N.A.
広視野で微弱光を捉えるための顕微鏡
マクロ蛍光顕微鏡 THT Mesoscope
概要
THTシリーズは、生物サンプルから発せられる微弱な蛍光を低倍率で且つ極めて明るく観察できるマクロ蛍光顕微鏡です。
2本の大口径対物レンズと特注大型蛍光フィルターを組み合わせた非常にシンプルな光路で、わずかな蛍光量もロスなく検出できる設計になっています。
膜電位感受性色素を用いた膜電位イメージングのほか、GCaMP, FRETなど各種蛍光タンパク質を用いた広視野イメージング用として世界中の研究室で使用されおり、これまでよりもS/N比の良い画像データが得られると大好評です。
2波長/3波長の同時計測セットアップや、実験条件・スペースに合わせたスタンドの変更/改造、その他ご要望に応じた特注品にも柔軟に対応可能です。
主な特長
- 低倍率で高い N.A 値 - メゾスコーピックイメージングに最適
- イメージングに特化したシンプルな構造
- 光軸を傾けたり回転できるため動物サンプルを傾ける必要は無し
- 蛍光フィルターの取り外しが簡単
- 多機能: 蛍光ビームスプリッターとして使用
- 倒立型も可能
アプリケーション
- 膜電位感受性色素イメージング
- In Vivo脳の広視野カルシウムイメージング
- FRET、GCaMP、GEVIによるイメージング
- ヘモグロビンおよびフラビン蛍光タンパク由来の内因性信号イメージング
- 光遺伝学とイメージングの組み合わせ
- 複数のカメラヘッドによるレシオメトリック蛍光イメージング
特長
明るい低倍率を実現:微弱な蛍光を広視野で撮影
レンズの組み合わせによって約0.19x~6.3xの総合倍率となります(実際の撮影範囲は使用するカメラのセンサーサイズによって変わります)。
大口径・高開口数レンズを使用していますので、極めて明るい撮影が可能です。これまで検出が困難であった信号がより容易に検出できるようになったり、これまで撮影できたサンプルでも、より高いS/N比で撮影できる可能性があります。
対物レンズの倍率 | レンズ口径 | 作動距離 |
---|---|---|
0.3x | 50mm | 140mm |
0.63x | 43mm | 67mm |
1x | 60mm | 62mm |
1.6x | 59mm | 31mm |
2x | 57mm | 20mm |
5x | 39mm | 19mm |
結像レンズ | 倍率 | マウント |
---|---|---|
50mm | 0.63x | C |
85mm/1.4 | 1.0x | EF / T / C |
135mm/2.0 | 1.6x | EF / T / C |
シンプルな構造:カメラ撮影に特化
目視観察機能はありません。あくまでもより高いS/N比でのカメラ撮影にこだわった設計です。
光軸部の傾け・回転が可能:撮影サンプルを傾ける必要無し
光軸部を左右360度回転させることのできるスタンドも選択可能です。光軸部を傾ければ、動物サンプルを傾けなくても脳の側頭葉全体を撮影するようなことも可能です。
蛍光フィルターの取り外しが容易
蛍光フィルターは着脱式のフィルターキューブに保持されています。フィルターキューブの付け替えで蛍光フィルターを交換することができます。
高い拡張性:蛍光分岐装置としても機能
通常はTHTシリーズ本体の左ポートに励起用光源を接続して同軸落射照明装置として使用します。
その他、2波長蛍光の分岐装置として使用することも可能です。この場合、左ポートに上ポートと同じレンズとカメラを接続し、2カメラを用いた2波長蛍光同時計測となります。
倒立型も可能
倒立型のタンデムレンズマクロ蛍光顕微鏡を試作しました。従来のマクロ蛍光顕微鏡を倒立型にすることで、試料ステージ上の空間が自由になるので、マニピュレータの設置や電極操作の自由度が増すものと期待しています。正立型の蛍光顕微鏡との併用も可能です。実験目的に合わせた顕微鏡ベースや試料ステージは別途ご相談下さい。
使用例
仕様
品名 | マクロ蛍光顕微鏡 THT Mesoscope |
---|---|
光学系 | タンデムレンズ光学系、カメラ専用 |
焦準装置 | 手動粗微動フォーカスドライブ、または 電動粗微動フォーカスドライブ(ダイヤル式コントローラ) |
顕微鏡キャリア | 対物レボルバ(M65ポートx2)、または光軸傾斜マウント |
フィルターキューブ | 引出し式 上面および側面に50mm径フィルターを各1枚装着可能 2軸あおり調整機構付きダイクロイックミラーマウント |
照明方式 | 同軸落射照明、または斜光照明 |
レンズポート | 上:1、側面:1、下面:1 |
対物レンズ(標準) | PLAN 0.3x PLAN APO 0.63x PLAN APO 1x PLAN APO 1.6x PLAN APO 2x PLAN APO 5x |
結像レンズ | PLAN APO 0.63x PLAN APO 1x PLAN APO 1.6x PLAN APO 2x 135mm/2.0 lens (w/ aperture and focus adjustment function) 85mm/1.4 lens (w/ aperture and focus adjustment function) 50mm/0.95 lens(w/ aperture and focus adjustment function) |
試料ステージ | オプション |
N256カメラとTHTシリーズ おおよその倍率と視野サイズ
対物側 | 結像側(カメラ側) | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
0.63x | 1x | 1.6x | 50mm (∞ 設定) | 85mm (∞ 設定) | 135mm (∞ 設定) | |
0.3x (WD:141mm) | 0.48x (36.6mmx36.6mm) | 0.3x (58.6mmx58.6mm) | 0.19x (92.6mmx92.6mm) | - | - | - |
0.63x (WD:67mm) | 1x (17.6mmx17.6mm) | 0.63x (27.9mmx27.9mm) | 0.4x (44mmx44mm) | 0.4x (44mmx44mm) | 0.69x (25.5mmx25.5mm) | 1.27x (13.9mmx13.9mm) |
1x (WD:61.5mm) | 1.6x (11mmx11mm) | 1x (17.6mmx17.6mm) | 0.63x (27.9mmx27.9mm) | 0.64x (27.5mmx27.5mm) | - | 2x (8.8mmx8.8mm) |
1.6x (WD:30.5mm) | 2.6x (6.7mmx6.7mm) | 1.6x (11mmx11mm) | 1x (17.6mmx17.6mm) | 1.02x (17.6mmx17.6mm) | - | - |
2x (WD:20.1mm) | 3.2x (5.5mmx5.5mm) | 2x (8.8mmx8.8mm) | 1.26x (13.9mmx13.9mm) | 1.28x (13.7mmx13.7mm) | 2.23x (7.9mmx7.9mm) | 4x (4.4mmx4.4mm) |
5x (WD:19mm) | 6.3x (2.8mmx2.8mm) | 4x (4.4mmx4.4mm) | 2.5x (7mmx7mm) | - | 4.48x (3.9mmx3.9mm) | - |
参考文献
神経イメージング
Cortical State Fluctuations during Sensory Decision Making.
Elina A.K. Jacobs, Nicholas A. Steinmetz, Andrew J. Peters, Matteo Carandini, Kenneth D. Harris
Curr Biol . 2020 Dec 21;30(24):4944-4955.e7.
Functional Differentiation of Mouse Visual Cortical Areas Depends upon Early Binocular Experience.
Kirstie J. Salinas, Carey Y. L. Huh, Jack H. Zeitoun and Sunil P. Gandhi
Journal of Neuroscience 17 February 2021, 41 (7) 1470-1488
Cellular and Widefield Imaging of Sound Frequency Organization in Primary and Higher Order Fields of the Mouse Auditory Cortex.
Sandra Romero, Ariel E Hight, Kameron K Clayton, Jennifer Resnik, Ross S Williamson, Kenneth E Hancock, Daniel B Polley
Cerebral Cortex, Volume 30, Issue 3, March 2020, Pages 1603-1622
心臓イメージング
Whole-heart multiparametric optical imaging reveals sex-dependent heterogeneity in cAMP signaling and repolarization kinetics.
Jessica L Caldwell, I-Ju Lee, Lena Ngo, Lianguo Wang, Sherif Bahriz, Bing Xu, Donald M Bers, Manuel F Navedo, Julie Bossuyt, Yang K Xiang, Crystal M Ripplinger
Sci Adv. 2023 Jan 20;9(3):eadd5799.