
小動物用 高解像度エコー ULTIMUS 9LAB

(本製品は研究用です。診断や治療目的では使用できません。)
ULTIMUS 9LABは小動物専用の超高速・高解像度の超音波イメージング装置です。
深い観察深度と高空間分解能を同時に満たし、数ミクロンレベルの微小血管すら可視化できる点が大きな特長です。
腫瘍、神経疾患、脈管、血管プラーク、冠動脈系、腎疾患、細胞薬物研究、脳機能イメージング、薬効評価など、微小血管が関連する様々な研究に活用できます。
ULTIMUS 9LABの用途
従来の超音波イメージング
ゼブラフィッシュからマウス、ウサギ、サルやブタまで多様な動物の超音波イメージングが可能です。各種超音波プローブの中から対象動物や目的に合わせて最善のアプローチが可能な超音波プローブを選択できます。
また、B、M、パルスドップラー、カラードップラー、パワードップラー、組織ドップラー、マルチドップラー機能を有し, 同期させた複数機能の画像をリアルタイムに表示する機能も有しています。
マウス心臓長軸 Bモード

マウス心臓長軸 B & Mモード

マウス心臓短軸 Bモード

マウス心臓短軸 弓状動脈 Bモード

マウス僧帽弁 フロースペクトル

マウス僧帽弁 組織ドップラー

心筋および血流
冠動脈微小循環機能研究の分野では、冠動脈微小循環系を直接評価することが望まれていますが、長い間、心臓の運動特性と細い血管径のために、冠動脈微小血管を画像検査で直接評価することは不可能でした。
しかしながらULTIMUS 9LAB は2,000fpsの超高速フレームレートとミクロンレベルの超高解像度により、心筋冠動脈微小循環系の直接評価を可能にします。
神経科学
アルツハイマー病 / 脳卒中
マイクロバブルは造影剤として超音波イメージングに広く使用されています。
このマイクロバブルと超解像超音波イメージング技術を併用すると、脳卒中、血管閉塞、および神経血管の状態を非侵襲的に評価できます。
マウス脳内の全体的な脳血管マップとその血流を迅速に測定することができるため、アルツハイマー病などの疾患モデル動物の神経血管メカニズムの研究に活用できます。
脳血流イメージング / てんかん
超解像超音波イメージング技術は、ミクロンレベルでの微小血流と微小循環の全体的な状況を表示するだけでなく、微小血管網の詳細も表示できます。
また微小血流の速度、方向、分布、血管の形状(屈曲度など)、直径なども測定できます。これらにより、微小血管網の臨床的な理解と疾患モデル構築の向上が期待できます。
マイクロバブルを使用しないスーパーマイクロフロー (SMF) イメージングにより、てんかんの発症を示唆する脳の血流変化をリアルタイムで捉えることができます。
ULTIMUS 9LABの特長
機能的磁気共鳴画像法より優れた最新の超音波エコー

人間の深部脳イメージングにはfMRI(機能的磁気共鳴画像法)が「ゴールドスタンダード」とされてきましたが、fMRIは時間分解能・空間分解能に限界があり、特にマウスなどの小動物に対しては観察精度が十分とは言えません。
実際のBOLD信号(fMRIの基礎)は局所的な脳血流の変化によって生じるものであり、それは脳活動と直結しています。
UTIMUS 9LABは脳血流のリアルタイムイメージングの他、下記の利点があります。
UTIMUS 9LABの利点
- リアルタイム脳活動イメージング
- 30μmの高空間分解能
- 1回のスキャンで撮影完了
- 1ミリ秒以下の超高速時間分解能
- 従来の超音波より最大100倍の感度
- 覚醒動物の脳活動も計測可能
超音波 超解像 顕微鏡法 (URM: Ultra Resolution Microscopy)

通常の超音波イメージングの空間解像度は数十ミクロンが限界ですが、これを遥かに越える10ミクロン以下の解像度を実現するためにマイクロバブルを造影剤として血管内に注入します。
このマイクロバブルの動態を高い時空間分解能でモニターできるULTIMUS 9LABだからこそ、微小血管を含む血管マップや血流速データの作成は可能です。
スーパー マイクロ フロー ( SMF : Super Micro Flow ) 機能

マイクロバブルを血管内に注入することなく、脳血流の変化をリアルタイムに検出して脳活動として推定します。
脳表面の血流速や酸素消費をイメージングする従来の手法とは異なり、脳深部まで観察できます。
覚醒動物の脳モニタリング - 正確で自由自在

Neurotar社製のエアフロートケージと併用すると、動物がどこにいても、起きていても眠っていても、自由に動いていても休んでいても、優れた画質の超音波イメージング画像が得られます。
ストレイン解析

心エコー検査は心臓の構造と機能を評価する主要な方法ですが、従来の技術では早期の異常を捉えにくいという課題があります。
「ストレイン解析」は心筋の微細な動きを可視化することで、より高感度に心機能の変化を捉える革新的な手法です。
特に「サイフォントラッキング」による解析では、心筋梗塞などの異常を従来よりも早期かつ正確に検出できます。
高精細・高速コントラスト

パノラマ型の超高速イメージング技術を基盤に開発された高精細・高速イメージング技術で、従来の造影法に比べてフレームレートは約2倍に向上、かつ最大毎秒300フレームの撮影が可能になりました。
これにより時空間分解能が飛躍的に向上し、イメージングの過程を初期段階から詳細に可視化できるため、これまで見えなかった微細な変化をリアルタイムで観察でき、より正確かつリアルに生体内の動態を把握することが可能になります。
腫瘍空洞化 (Tumor Cavitation)
熱を使わず、癌を狙い撃つ低出力の超音波治療法。
高出力超音波による熱損傷の副作用を回避しながら、治療部位でのキャビテーション(空洞化)強度をモニタリング・制御できます。小動物用の治療の進行をリアルタイムに確認することで、より正確な治療効果の研究が可能になります。
この技術は低酸素性固形腫瘍の治療抵抗性という医学上の大きな課題の解決に向けて、ULTIMUS 9LABは信頼性の高い研究装置としての役割を果たします。
URMイメージング例
開頭ラット脳



経頭蓋マウス脳



ラット腎臓



マウス大腿部



マウスメラノーマ



URMやSMFが応用された例
アルツハイマー病モデルマウスの脳
5XFADトランスジェニックマウス/経頭蓋骨/1KHz

D) 3ヵ月齢と6ヵ月齢のアルツハイマー病モデルマウスの血流方向マップ

アルツハイマー病における脳血管病理学的な研究に必要な「高精度の脳深部構造のイメージング」は従来は困難でした。しかし、超解像度超音波局在顕微鏡(ULM)により、3か月齢のアルツハイマー病のマウスモデルで既に血管機能に障害が見られ、6か月齢以降で構造的異常が観察されるようになることが示されました。この結果はアルツハイマー病の毛細血管の病理学的な異常が早期に発生することを示唆しています。
出典:
Lowerison, Matthew, et al. "Super-resolution ultrasound imaging of cerebrovascular impairment in a mouse model of Alzheimer's disease." bioRxiv (2022): 2022-10.
若齢および老化マウスの脳
CBA/CaJマウス/開頭/1KHz

加齢に伴う認知機能の低下のメカニズムを特定するために、超解像度超音波局在顕微鏡(ULM)を用いてマウスモデルを調査した結果、高齢マウスでは脳の各領域で血液速度の低下と血管の湾曲の増加が見られ、大脳皮質での血液量が減少していました。これらの結果は加齢が脳の毛細血管の動態に重大な影響を与えることを示唆しています。
出典:
Lowerison, Matthew R., et al. "Aging-related cerebral microvascular changes visualized using ultrasound localization microscopy in the living mouse." Scientific reports 12.1 (2022): 619.
ラット脳機能イメージング
SDラット/開頭/500Hz

または視覚刺激を実施する実験系の模式図

6.5μmの解像度で表したもの(n=7)
神経画像法の進歩により脳機能の理解が向上し、超解像度超音波局在顕微鏡(ULM)とマイクロバブルの静注を併用することでラット脳の深層領域の毛細血管の血流を観察することが可能になりました。
出典:
Renaudin, Noémi, et al. "Functional ultrasound localization microscopy reveals brain-wide neurovascular activity on a microscopic scale." Nature methods 19.8 (2022): 1004-1012.
ラット脊髄
SDラット/椎弓切除/500Hz

(下)ラット脊髄のイメージング例

(E-F) 矢状面での血流量画像および血流速度画像
慢性疼痛に関する研究では脊髄の神経血管が注目されていませんでしたが、機能的超音波画像法(fUS)を用いた新しい研究により、刺激に対するラット脊髄の血流動態が特異的な応答を示すことが観察されました。特に炎症状態では触覚過敏刺激に対する応答が強化されました。
出典:
Claron, Julien, et al. "Large-scale functional ultrasound imaging of the spinal cord reveals in-depth spatiotemporal responses of spinal nociceptive circuits in both normal and inflammatory states." Pain 162.4 (2021): 1047.
腫瘍・移植腫瘍
ニワトリ胚絨毛膜 (CAM)+ヒト大腸がん細胞 (HCT):1KHz


(c) 化学療法では勢定が激しく無血管領域が現れる (d) Sorafenib処置と化学療法を併用した場合も無血管領域がみられる
ULMは超解像度の毛細血管画像を臨床的に重要な深度まで画像化し、組織内の血液動態や低酸素状態を定量的に測定できる非侵襲的手法です。ULMで取得した画像にULMマイクロバブルデータ処理を併用すると、組織内の酸素状態のバイオマーカーとして利用できることが示されました。この手法は固形腫瘍の診断と治療モニタリングにおける重要な臨床画像診断手法となる可能性があります。
ULMは臨床的に重要な深度でも前例のない血管解像度を持ち、がん治療における毛細血管の変化を画像化できる可能性があります。本研究では ソラフェニブや化学療法などの治療を受けた結腸癌モデルの毛細血管をULMで画像化することにより、抗血管新生剤治療による形態学的変化や化学療法による血管障害の証拠が示されました。これはULMが化学療法感受性の指標となる可能性を示唆しています。
出典:
Lowerison, Matthew R., et al. "Ultrasound localization microscopy of renal tumor xenografts in chicken embryo is correlated to hypoxia." Scientific reports 10.1 (2020): 2478.
Lowerison, Matthew R., et al. "Characterization of anti-angiogenic chemo-sensitization via longitudinal ultrasound localization microscopy in colorectal carcinoma tumor xenografts." IEEE Transactions on Biomedical Engineering 69.4 (2022): 1449-1460.
記載された内容は2025年4月11日現在の情報です。予告なく仕様や機能が変更される可能性があります。
ULTIMUS 9LABは中国 Beijing Yeeran Technology Co., Ltdの製品です。本装置は研究用機器であり、臨床検査や診断には利用できません。