マルチデバイス同期装置 ESTM10
ESTM10は刺激パルスの出力、カメラの撮像タイミング制御、LED光源の点灯制御、生体信号記録機能、オシロスコープ機能など、生物イメージング実験や電気生理学実験でよく用いられる機能を内蔵したオールインワンシステムです。
内蔵された各機能は同期して動作しますので、お持ちの周辺機器をESTM10に接続すればプログラミングやハードウェアについての特別な知識がなくても周辺機器を完全同期させることが可能です。
小さなボディにもかかわらず多機能!この1台があれば生理学の学生実習から学術研究まで対応することができます。
機能一覧
- パルス出力(5ch出力/8ch設定可能)*1)
- アナログ出力(1ch)
- アナログ信号記録(2ch)*2)
- デジタル信号記録(2ch)
- カメラフレーム同期信号入力/出力(1ch)
- TTL信号の入出力に同期したLED光源の点灯タイミング信号出力(3ch)
- 任意のタイミングでの光源点灯信号入力/出力(1ch)
- オシロスコープ機能 *2)
- サウンドモニター出力 *3)
- 複数のトリガーソースに対応(外部TTL信号、ボタンスイッチ、外部アナログ信号、ソフトウェア、内部リピートトリガ)
- USB接続で給電、ソフトウェアから操作やパルス設定が可能
*1) 必要に応じてアイソレータは別途必要
*2) アンプは別途必要
*3) アンプ付きスピーカーは別途必要
応用分野
- 脳・神経細胞や単離心臓・培養心筋細胞などを使った電気生理実験
- カエルなどの動物サンプルを使った生理学学生実習
- In Vivo脳を対象にしたGCaMPイメージング
- 脳・心臓サンプルを使った膜電位イメージングやカルシウムイメージング
使用例
- 1. カメラ、光源、アイソレータ、電気生理アンプと組み合わせて、イメージングと生体電気信号記録を同時に行うためのマルチデバイス同期装置として
- 2. アイソレータと組み合わせて電気刺激装置として
- 3. カメラと2-3波長LED光源を接続し、カメラのフレーム単位にLED光源を交互点灯させる2-3波長励起蛍光イメージングを行うためのタイミング同期装置として
(例:405と460nmで励起するGCaMPイメージング、380nmと340nmで励起するFura-2 カルシウムイメージングなど ) - 4. TTL信号で駆動する光源や外部機器を接続し、任意のタイミングでON/OFFさせるコントローラーとして
- 5. 電気生理用アンプを通した生体電気信号を記録するデータロガーとして
- 6. 電気生理用アンプを通した生体電気信号をモニターするオシロスコープとして
- 7. 細胞内に刺入する電極の抵抗値をモニターするサウンドモニターとして
- 8. アナログ信号を入力し、入力した信号の電圧がある範囲に達したタイミングでパルスを出力するウインドウディスクリミネータとして
- 9. 単体でパルスジェネレータとして
ソフトウェア
ESTM10のコントロールはソフトウェアで行います。
メインウインドウ
各機能へのアクセスと、トリガや入出力機能の管理を一元化。アナログ信号記録のON/OFFやパルス出力チャンネルの選択も可能。
各機能の画面
主な機能
1. 外部機器の接続と同期
以下の図は本装置が想定している典型的な使用方法です。
複数の蛍光波長を発する生物サンプルに対して、記録電極での電気記録と刺激電極からの電気刺激、さらに高速カメラのフレームに合わせて3色のLED光源を交互に切り替える3波長励起蛍光イメージングをするための実験セットアップの例です。
実際にカメラで動物や組織サンプルをイメージングする際には、イメージングの開始/終了に合わせて照明を点灯/消灯させたり、イメージング中に電気刺激したり、同時にサンプルの電気活動を記録したくなります。
そこで問題なのは、それら全ての機器を同じタイミングで動作させる必要があることです。本装置ならカメラや刺激装置への駆動タイミングを出力しつつ、周辺機器が捉えた信号を同期記録できますので1台で問題を解決します。
外部トリガ(Trigger Input)に応じて予め設定したRun時間のカウントが始まり、任意の遅延時間後に刺激パルス(Stim. Pulse)が出力されます。この刺激パルスに対する組織の応答はAnalog In端子に入力して記録することが可能です。また、Run時間のカウント開始と同時に出力されるV-sync信号でカメラの露光開始タイミングが制御され、V-syncに同期してLED1とLED2への点灯信号が出力されます。
パルス出力
本装置からは8チャンネルの独立したパルス列を任意のパターンで発生させることができます。
単発パルスや連続パルスのほか、心臓研究で用いられるパルス間隔を変化させる刺激プロトコル(例:S1-S2-S3)も可能です。
周波数を変えたり、長めのインターバルを設定することも可能です。
基本的にはGUIを用いてパルスパターンの設定を行いますが、コードエディタを使ってパルスパターンを指定することもできます。
3. アナログ/デジタル信号記録
2chのアナログ入力(1Vまたは10V)と2chのデジタル入力を記録し、ファイル保存することができます。
100kHzで最長10分記録する基本モードや、トリガーの発生前に入力されたデータも記録するプレトリガーモード、10kHzで最長1時間記録する連続記録モードがあります。
保存されたデータファイルは専用ビューワーソフトで開くことができ、表示やデータ解析のほか、CSV形式でエクスポートすることも可能です。
4. LED点灯制御機能
カメラのフレーム信号(Video Sync Signal)の入力/出力に同期したタイミングで、最大3つのLEDを任意の順番で点灯させることができる機能です。フレーム信号の周波数、点灯遅延時間、点灯時間、点灯順序を指定するだけで設定は完了します。
2波長・3波長励起の蛍光イメージングでもLED点灯を制御のためのパルス列設定はもはや不要です。
ローリングシャッターカメラに同期したLEDの交互点灯
ローリングシャッターカメラは下図のように画素列によってV-Sync入力後の露光開始時間が異なります。そのため、フレーム毎に異なる励起光を照射したい場合には全画素が露光状態になっている時間帯だけ任意の波長のLED光を照射させる必要があります。画素列による露光開始の時間差は各カメラのマニュアルに記載されているのでご確認ください。
本装置の場合、V-Sync信号からの遅延時間と点灯時間を設定して、LEDの数と点灯モードは別に設定すれば後は自動的に点灯信号を割り振って出力します。
5. オシロスコープ
アナログ入力された信号をデジタルオシロスコープのようにリアルタイムで表示する機能です。SingleモードとRunモードがあります。
仕様
項目・名称 | 仕様および推奨条件 | 備考 |
---|---|---|
寸法/ 重量 | 245mm (W) x 90mm (H) x 180mm (D) / 1.3kg | |
電源電圧 | 5V | USB2.0 |
使用温度 | 室温 (10-50℃) | |
環境仕様/安全性 | RoHS3準拠、CE(LVD、 EMC)規格準拠 | |
入力端子 | Analog (2ch) / Bit (2ch) / Trigger (1ch) | Standard BNC |
出力端子 | Pulse (5ch) / Run (1ch) / LED (3ch) / Analog (1ch) / Sound (1ch) | Standard BNC |
I/O端子 | V-sync (1ch) / Shutter (1ch) | Standard BNC |
電気特性 | ||
デジタル入力端子 | 入力電圧: 0V/5V (-2V to 10V) 入力抵抗: 10KΩ (2.2KΩ to 10KΩ) 入力容量: 20pF (to 50pF) | 電圧破壊耐性 |
デジタル出力端子 | 出力電圧: 0V/5V (0V to 5.5V) 出力抵抗: 100Ω (to 120Ω) 出力電流: 5mA (4mA to 10mA) | 電流負荷耐性 |
アナログ入力端子 | 入力電圧: 10V (±100V) 入力抵抗: 110k/2.2MΩ (100kΩ to 2.3MΩ) 測定制度: ±0.3% (error: ±1%) | 電圧破壊耐性 |
アナログ出力端子 | 出力抵抗: 100Ω (to 12ΩΩ) 出力電流: 5mA (2mA to 10mA) | 電流負荷耐性 |
アナログ出力1 | 出力電圧: ±1V (±1.2V) | 非校正 |
アナログ出力2 | 出力電圧: ±4V (±4.2V) 設定精度: ±0.3% (±0.1%) | 校正後精度 |
タイミング特性 | ||
トリガ機能 | - トリガ応答時間: 25.1μsec ~ 25.3μsec - 外部トリガ応答時間精度: -12nsec ~ 25nsec - 内部リピート間隔: 10msec ~ 320sec - アナログトリガ時間精度: ±10usec | |
パルス発生機能 | - パルス幅および間隔の時間精度: ±1nsec - チャンネル間の時間精度: ±6nsec - 設定可能なパルス幅および間隔: 10μsec ~ 167sec - 設定可能なパルス列連続可能時間: 10μsec ~ 596min | 8チャンネル |
アクイジション機能 | - サンプリング間隔(選択): 10μsec/100μsec/500μsec - チャンネル間の時間差: ±2.5usec - 周波数範囲(10μsec時、-6db値): DC 20kHz - 10μsecサンプリング時の記録時間: 1msec ~ 600sec - 100μsecサンプリング時の記録時間: 10msec ~ 6,000sec - 500μsecサンプリング時の記録時間: 50msec ~ 30,000sec | アナログ |
LED制御機能 | - V-syncフレームレート範囲: 1 ~ 5,000fps - V-sync入力時のLED遅延時間: 100nsec ~ 1μsec - V-sync出力時の設定誤差/時間精度: ±0.01fps/±12nsec - V-sync Run制御遅延時間: 100nsec ~ 1μsec - LED点灯時間: 1μsec ~ (最小時間はfpsに依存) - LED遅延/点灯時間精度: ±3nsec - LEDチャンネル間の時間誤差: ±3nsec | 主に>15.3fpsの時 |
DAC2機能 | パルス遅延および立上がり時間 1.5usec~2usec | 4V出力時 |
ノイズ特性 | ||
アナログ入力 | - ±1V入力・10μsecサンプリング時のノイズ電圧: 0.5mV (rms value), 2mV (P-P値) - ±1V入力・100μsecサンプリング時のノイズ電圧: 0.1mV (rms value), 0.5mV (P-P値) - チャンネル間のクロストーク 0.2% (補正後) | 14ビット |
アナログ出力 | ノイズ電圧: 2mV (rms値) |
* この製品は研究専用です。 * この商品は日本製です。