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神経の活動を光で追う – 3

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3. 明るい光学系と高速カメラシステム

ブレインビジョン株式会社 市川道教

光学系の明るさは、おもに対物レンズの開口数(NA)による。開口数が倍になると、受光系で4倍、照明系で4倍、合計で16倍明るい映像が撮影できる。つまり、明るさは開口数の4乗に比例する。開口数が高いレンズとは、大口径で焦点距離が短いということである。したがって、被写体から広がる光を広角に捉えるので明るい。市販の顕微鏡レンズの場合、40倍で0.7程度、20倍で0.3程度、10倍では0.1程度のものが一般的である。しかし、図2のように、最も用途の多い神経回路の観察などでは、1~3倍の低倍の光学系が必要になる。多くの顕微鏡メーカーの販売する2倍レンズの開口数は0.05程度で、きわめて暗い。そこで、われわれは図4に示したような特別な光学系を作製して使用している。対物レンズはニコン製の一眼レフレンズ(F1.2、50mm 標準レンズ)を解体して余分な部品(絞りや焦点調整機構)を取り除きケースに収め再組立てしたものを使用している。このレンズの開口数は約0.7である。市販の顕微鏡レンズに比べて、200倍明るい映像が得られる。
この自作の顕微鏡は、高い開口数のレンズを2つ用いて、いわゆる無限遠設計になっている。ダイクロイックミラーの置かれる本体部分はほぼ平行な光束が通り、投影レンズを経てCCDセンサーに結像される。投影レンズにはライカ製の80mmの実体顕微鏡レンズを用いている。総合倍率は約1.6倍である。590㎚以上の長波長のみを通す吸収フィルターを配置した。


図4 光学系は開口数が大きな対物レンズを中心に組み上げた自家製の同軸落射蛍光顕微鏡である。黄色の線で示したのが照明光であり、赤で示したのが蛍光光である。両者の分離にはダイクロイックミラーを用いる。この顕微鏡が明るい理由は、カメラレンズ(Nikon F1.2, 50mm)を解体して作った対物レンズにある。その下に試料である脳のスライスを置き、電極などをセットする。総合倍率は約1.6倍。


照明系には市販の150Wハロゲン電球を用いたファイバー照明器具(モリテックス製、MHF-G150)を用いている。色素の波長特性に合わせるため、照明は干渉フィルターを通し、緑色光(530nm)にしている。ダイクロイックミラーは、530nmの光を90%以上反射し、試料に投下される。試料での蛍光のうち、590~650nmの光が電圧感受成分なので、これを効果的に切り出すため、ダイクロイックミラーは590~650nmの光を90%以上透過し、その後、迷走光を遮るため590nm以上の長波長のみを通す吸収フィルターを配置した。
カメラシステムは、われわれの研究室とブレインビジョン社で開発した高速CCD撮影システムである。このカメラに使用しているCCDセンサーはSONYのICX076という通常用途の白黒CCDイメージセンサーである。普通は、7MHz程度のクロックで動作させるべき部品であるが、強引に50MHzで動作させ、さらに、縦方向(V方向)のCCD転送クロックを4回連続で与え、縦の走査線数を60本にまとめることで高速に動作させている。結果として、約700μsecで全画面の読み出しが可能である。神経活動が1msec程度であることを考慮すると700μsec必ずしも十分な速度ではないが、おおむね要求を満たす速度である。このCCDセンサーは1/5インチサイズで、有効受光面はおおむね3mm×2mmほどである。小型なため、蓄積可能な電荷量が少ないのがやや不満な点であるが、ここまで高速動作が可能なのは、小さいためなので納得している。CCDセンサーで捉えられた映像は高速ADCを経て、デジタル処理によって加工・保存される。映像データは一時的にメモリーに貯え、計測直後にPCIバスを介してホストコンピュータに転送される。


(出典 共立出版 「光による医学診断」(2001年3月30日出版))

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